積み立て投資で「上がっても下がっても嬉しい」は欺瞞である
よく、投資信託の積み立てを推奨する本などで、「積み立て中に基準価格が下がった方がトータルで成績が上がる」と言うことが図や計算付きで示されています。
これを持って、投資で「下がっても嬉しい」と思って積み立てよう!と宣伝されています。
この主張は、間違ってはいません。しかし、正確には、「インカムゲインとキャピタルゲイン/ロスを合わせた、トータルリターンの話として、積み立て中は基準価格が下がり、積み立て終盤で基準価格が上昇するならば、結果的にはそれがもっとも利益率が高くなる」であり、正しく理解するのが大切です。
ここまでの議論は、インカムゲインとキャピタルゲインを一緒にした話でした。(特に無分配型の)投資信託では、インカムゲインが再投資されてしまいます。これは、良いようで、悪い面も含まれていると私は考えています。
下がった後、未来永劫下がり続ける場合、以上の考え方は役に立ちません。
トータルリターンを考える上で、投資本来的に、リスク管理上も、「上がるのが嬉しい」と「下がるのが嬉しい」を同時に思うことは、二律背反にすらなっておらず、ただの欺瞞です。細かく分析すれば「嬉しい」の理由が違うという事になりますが、裏を返せば「下がったら悲しい」し「上がっても悲しい」という事に他なりません。
両方楽観するのは両方悲観するのと同様に欺瞞であり、不健全な考え方と思います。
配当としてのインカムゲインは、「正しい配当政策」を行なっている企業の場合、純然たるキャッシュフローすなわち、フリーキャッシュフローという企業が本当に得たお金の中から支払われます。ですので、配当を得るという行為は、利益確定の行為の一種です。私は、この点を強く意識して投資を行っています。
株価は市場の評価に晒(さら)され、ミスター・マーケットにより常に変動しているので、トータルリターンは常に変動します。良い年もあれば悪い年もあるはずで、私のように投資の最初から数年連続でプラスリターンとなっている人も、最近では多い事でしょう。しかし、それに一喜一憂せず、多少の景気の波に呑まれても、動じないフリーキャッシュフローを稼ぐ企業に投資し、しっかりとその配当という実現益を得る。この考え方は非常に重要かと思います。
「キャピタルゲインが得られれば嬉しい」「インカムゲインが得られると嬉しいし、さらにそれが年々増えて行くともっと嬉しい」「キャピタル・ロスが発生すると悲しいが、ただし、ポテンシャルが良い企業の場合は市場の評価が下がれば、DPSやEPSが上がりPERやPBRが下がり、配当再投資や追加投資で有利となり嬉しい」と考えるのは、バリュー投資家の考え方と思います。これは、バフェットの言うように、どんな投資環境でも当てはめられる考え方ではないでしょうか。
「市場全体では評価が下がってもゼロにはならないから、悲しいけれども市場全体に投資していればそのうちまた戻るかも」だから「新たな積み立て分でキャピタルゲインが得られれば嬉しい」と念じられるのは、株式市場が長期的に右肩上がりであろうという願望から生まれた考え方であることを、充分認識しましょう。
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